秩父フルーツファーム
緑豊かな山々の自然と美しい渓谷に囲まれた秩父にありながら、駅からアクセスの良いところに「秩父フルーツ...
品質がよく、おいしいことで知られる日本のフルーツ。ときおりニュースにもなる超高額果物や、有名フルーツ店の高級品だけでなく、スーパーに並ぶ一般的な果物も、美しく安定した味を保っています。
これは改良が重ねられた各品種を、手間暇かけて栽培しているため。そこには日本の農家ならではの、技と工夫がありました。インドネシア人旅行者のエルナさんが、その一部を体験してきました。
エルナさんが訪れたのは、東京都のすぐ北の埼玉県。
ブドウやナシ、クリなどの果樹の栽培が盛んで、首都からのロケーションのよさを生かした観光果樹園も多いエリアです。
埼玉県東部の春日部(かすかべ)市にある「折原果樹園」も、そんな果樹園の1つ。ナシやキウイ、カキ、シャインマスカットなど、多品目のフルーツを栽培・販売するほか、1~5月にはイチゴ狩りも楽しめます。
400坪の広いビニールハウスに入ると、人の背丈ほどの高さに整然とイチゴが並んでいます。
ここでは「かおり野」、「あまりん」、「紅ほっぺ」、「よつぼし」、「あきひめ」の5品種が栽培されていて、食べ比べが可能。なかでも埼玉県の新品種のイチゴブランド「あまりん」は、まだ栽培する農家も多くない珍しいイチゴ。それを味わえる貴重なチャンスです。
エルナさんもさっそく摘み方を教えてもらい、イチゴ狩りを体験しました。
ヘタがそり返り、表面についたゴマ粒のような部分まで赤くなったイチゴが食べごろだそうです。
イチゴの実を持ったら、まっすぐに引っ張らず、少し手首をひねるようにすると実が簡単に取れます。
農薬をほとんど使わずに育てた安全なイチゴなので、洗わずにそのまま食べられますよ。
イチゴのへたは最初にもらえるプラスチックのカップに入れておき、最後にゴミ箱へ。
練乳をつけて食べたい場合は、持参も可能です(販売もあり)。へたを入れるのと同じカップの別皿に練乳を入れて、イチゴにつけて味わえます。
イチゴ狩りは何度か経験があるというエルナさん。「インドネシアと違って、イチゴが大きくて、とっても甘いです!」と、大喜び。
さらに、「イチゴにこんなに種類があるなんて、知りませんでした。それぞれ味が違っておもしろいですね。とくに『あまりん』は酸味が少なくて味がしっかりしていて、とてもおいしかったです」と笑顔を見せてくれました。
自国ではなかなかできない楽しい体験となったようです。
折原果樹園のおいしいイチゴは、どうやって作られているのでしょうか。農園主の折原さんにお話を聞きました。
折原果樹園のイチゴの栽培方法は、高設ベンチを使った養液土耕栽培と呼ばれるものです。
胸ぐらいの高さの場所に土を盛ってイチゴを植え、水に溶かした肥料をパイプで流しています。この方法だと衛生的でイチゴが病気にかかりにくく、しかも土耕栽培と同じぐらいおいしいイチゴが栽培できるのだそう。
ハウス内の一角には、肥料用のポンプや空気を循環させる装置など、さまざまな機械が並んでいます。
「ある時、おいしいイチゴを作るには、いい肥料をやるよりも光合成をさせることが大事だと気付いたんです」と折原さん。そのため、二酸化炭素を発生させる装置と、それを循環させる装置も置かれています。
全体の管理はコンピューター上で行い、土の温度や排水の内容も細かく調べ、イチゴの状態に常に気を配っています。また、殺菌効果のある紫外線のライトを、深夜に毎日数時間当て、病気予防に役立てているそうです。
多くの設備と工夫、そして何よりもその熱意が、おいしいフルーツを生み出すために不可欠なのです。
また、折原さんは、フルーツを通じて人を育てる活動もしています。
「私たちは大家族です。親が働いているところを子どもに見せるのは、良いことだと考えています。そして、小さいころから質のいい安全なフルーツを食べさせて、子どもの味覚の発達を助けたいと思っています。その思いが広がり、今は自分の子どもだけでなく、小学校や地域の人たちへの食育活動を続けています」
社会科見学で折原さんの果樹園を訪れ、フルーツを口にした小学生が「ナシがこんなにおいしいなんて知らなかった」と、感激して帰っていくこともあるそうです。
その経験がきっと、今後の安全な食の選択や知識の習得につながっていく。折原さんはそう信じているのです。
折原果樹園では、自家栽培のジャムやジュースのほか、アメなどの加工食品も販売しています。
主力商品であるナシは、イチゴ狩りの季節にはありませんが、こうした加工品なら長持ちしますし、人にあげても喜ばれるでしょう。
日本のフルーツのおいしさを閉じ込めた加工品は、農園訪問の記念にもオススメ。
折原果樹園の詳細はこちらをご覧ください。
https://japan-gastrotourism-and-trade.com/fruits/2019/02/15/3303/
次に向かったのは、ブルーベリー栽培が盛んな埼玉県北部の熊谷市。エルナさんはブルーベリー農家の1つ「ファームFUMI」を訪れました。
この農園では6品種のブルーベリーを栽培しており、6月下旬から9月上旬にかけて摘み取りができます。
しかし訪問した2月は収穫時期ではないため、葉を落としたブルーベリーの畑が広がっていました。
実はフルーツには、収穫以外の季節にも多くの労力がかかっています。冬に行うというブルーベリーの剪定作業を、エルナさんも体験してみました。
ブルーベリーの剪定は、何のためにするのでしょうか?
農園主の高橋さんによると、「剪定をすると、大きくていい実をたくさんならせることができます。木の中の日当たりや風通しがよくなって木が健全になり、枝を若返らせる効果もあります」とのこと。剪定は農家にとって、とても大切な作業なのです。
広がって伸びている枝や古い枝を選び、切ります。枝についているたくさんの芽には、葉になる葉芽と花になる花芽がありますが、花芽を適度に残して剪定しないと実がならなくなってしまいます。
エルナさんは、ブルーベリーの木を見るのも、剪定も初めて。
「枝を切るのは楽しかったですが、どれを切るか瞬時に見分けるのは、慣れないと難しいと思いました。今度は夏に収穫をしてみたいです。それから、ブルーベリー畑の周りに広がる風景が、とてものどかで気持ちよかったです」。
ファームFUMIでは、すべての果樹を農薬を使わずに育てています。生えてくる雑草はすべて手で除き、有機肥料を与え、乾燥を防ぐためのチップを敷くといった作業があるため、広大な畑の管理には、とても手間がかかるそうです。
品種によって異なりますが、ブルーベリーはときに500円玉よりも大きな実がなるのだそう。夏の青々と茂ったブルーベリー畑も気持ちがよさそうですね。ここは農薬を使っていないため、子ども連れでも安心して楽しめるでしょう。
農園主の高橋さんご夫妻は、公務員として定年まで働き、数年前に祖父からこの農園を受け継ぎました。農家として社会に貢献したいという思いから、手ごろな料金でブルーベリー摘みや栗拾いを実施し、一方で青少年の立ち直り支援を行ったりもしています。
「この場所にはキジの親子や野ウサギもやってくるんですよ。来てくれる人には、昔ながらの里山の風景ときれいな空気も楽しんでほしいですね」
おみやげには、農園オリジナルのキウイのジャムと、ブルーベリーチーズスプレッド(各税別650円)を。オーガニックの砂糖と国産チーズを使用し、濃厚なフルーツの風味が楽しめます。ファームFUMIの加工品は無添加で、体にもやさしいですよ。
ファームFUMIの詳細はこちらをご覧ください。
https://japan-gastrotourism-and-trade.com/fruits/2019/02/15/3301/
今回、各農園でお話を聞き、実際に体験することによって、フルーツを作るための多様な努力がされていることがわかりました。
農園の人にも、どんなフルーツを作りたいか、今後フルーツを通じてどんなことをしたいのかなど、さまざまな思いがありました。
おいしいフルーツには、情熱をこめてそれを作る人が必ず関わっています。日本でフルーツ狩りに行くときには、フルーツを育てるためにどんな工夫がなされているのか、ぜひ気にかけてみてくださいね。